オンラインショップへのユーザー流入経路は、検索エンジンやSNSが主流です。しかし、生成AIツールをインターネット検索やショッピングに利用する消費者が増えたことにより、これらのツール経由でのサイト流入や商品注文が今後増えていくことが予想されています。
この記事では、増加する生成AIツール経由の注文を見越して、ECでAIエージェント対応の製品データを用意しておく重要性について解説していきます。また、Shopify(ショッピファイ)を活用する際の具体策についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

AIエージェント対応の製品データとは
AIエージェント対応の製品データとは、AIツールが製品情報を正確に理解して処理できるよう、あらかじめ最適化したデータのことです。これにより、消費者が生成AIを通じて検索した際に、自社で販売している製品の正しい情報やPRしたい内容が表示されやすくなります。
消費者のためのわかりやすい文章やレイアウト、検索エンジンのための商品ページのSEO対策といった施策に加えて、AIエージェントに対応するにはデータ構造などに配慮する必要があります。正しいフォーマットで対応していなければ、AIを通じたチャネルでは検索や販売ができなくなってしまう可能性があります。
AIエージェントがECに与える影響
株式会社いつもが実施した調査によれば、日本国内でも「商品を探すときにAI検索を使ったことがある」と答えた消費者は過半数の64%にのぼる結果が出ました。この結果から、すでにAIが買い物ツールとして日常に定着しつつあると考察されています。
今後はAIがさらに自律的に判断を行い、ユーザーの要望や予算に最適な商品をレコメンドしてくれる「エージェンティックコマース」の実現に向けてAIプラットフォーム各社は動きだしています。消費者はインターネット上で商品を探し回ることなく、AIの提示する商品を買うかどうかだけ判断すれば良いということになるでしょう。みずほ銀行の推計によれば、こうしたAIによる買い物代行の販売額は、2040年に6.6兆円という規模に達するとされています。
ECプラットフォームのShopifyは、近い将来のエージェンティックコマース時代に対応するため、Google(グーグル)と共同で「ユニバーサルコマースプロトコル(UCP)」を開発しました。UCPは商品データや決済インフラ、フルフィルメントロジックなどを構造化することで、AIエージェントがあらゆるネットショップと円滑に接続できるようにします。これにより、消費者はAIツール上でシームレスに買い物ができるようになります。

AIエージェント対応の製品データが重要になる理由
1. AIの回答に表示されるために必須となる
顧客を惹きつけるためのコピーライティングや魅力的な画像、わかりやすい動画だけでは、AIは商品の詳細や強みを理解できません。さらに、AIが解読できない情報が多い場合、その商品をユーザーに勧めない仕組みとなっているため、自社製品が回答内に表示されるためにはAIエージェントが読める形でのデータを用意しておく必要があります。
2. AIに購入可能な商品であると認識してもらえる
AIエージェントは検索や分析とともに、決済手続きまでそのプラットフォーム上で完了できるようになりつつあります。そのため、販売しているアイテムが購入可能な商品であることを知らせるために、リアルタイムの在庫状況やサイズ、色などがAIに読み取れる状態にしておくことが重要です。
3. AI経由の顧客のコンバージョン率が高い
Shopifyの2026年第一四半期のデータ(英語)によると、AI経由の注文数は前年比で約13倍に増加していると報告されています。さらに、AI経由でのサイト訪問者は、オーガニック検索経由の訪問者に比べてコンバージョン率が約50%高いことが分かっています。消費者の購入動向が変化している現在、AIエージェント対応の製品データを用いることで売り上げやコンバージョン率アップが見込めると言えるでしょう。

製品データをAIエージェント対応にする際の課題
製品データをAIエージェントに対応させる際、データが複数箇所で管理されていることが課題となる場合があります。
特に長年の実績を持つ大企業や大手小売業者においては、データの管理体制はビジネスの成長や市場のトレンドに合わせて変化を続けたことで、複雑化しています。ECサイトのデータが、ERP(総合基幹業務システム)やPIM(商品情報管理システム)、マーケットプレイスなどの販売チャネルと連携されていることも珍しくありません。さらに、OMS(受注管理システム)やWMS(倉庫管理システム)、DAM(デジタルアセット管理)が導入されていくことで、商品属性データがそれぞれのシステム上で個別に管理されています。
その結果、製品データは複数箇所に分散されて管理されることになります。自社のウェブサイトだけでなくECサイトやマーケットプレイス、SNSなど販売チャネルが異なればフォーマットも異なり、同一商品であってもバックエンドには異なるデータが存在している状況を生み出しました。
こういった状況にある製品データをAIエージェント対応にするためには、まずその条件と実装する方法を理解する必要があります。

製品データをAIエージェントに対応させるための条件
製品データをAIエージェントが理解しやすいものにするためには、「機械可読性」と「リアルタイム性」という2つの条件が重要となります。
機械可読性
機械可読性とは、コンピュータが読み込み、処理できるデータ形式のことです。商品データを含めたインターネットコンテンツは、サイト閲覧者向けに作られています。その際に重要となる詳細がわかる画像や見やすいデザインは、AIが情報を理解する役には立ちません。例えば白地に赤いシューレースというデザインの靴の写真に、「スタイリッシュに映える赤」といったコピーがついていた場合、AIは商品そのものが赤色であると誤認してしまう可能性もあります。
買い手が必要とする情報が全て掲載されていたとしても、AIが理解できる形式でデータ化されていない場合、AIは存在していないものとして扱います。そのため、価格やサイズ、カラーバリエーションなどの入力されているデータフィールドを明確にするなど、製品の情報を正しく理解できる形式に構造化することが重要です。
リアルタイム性
AIエージェントの回答は基本的に、過去に収集された情報をもとに生成されます。しかしこの手法では、最新の在庫や割引などが実際の情報と異なってしまいます。おすすめされた商品を購入するようAIに指示したあとに、実は在庫切れだったり、セールが終わっているため価格が違っていたということをユーザーが知ることになれば、顧客体験は大きく損なわれます。
そこでエージェンティックコマースを実現するためには、リアルタイムデータをAIが取得できるようにする必要があります。Shopifyが開発したUCPなどを利用することで、AIプラットフォームとECサイトをAPI連携させ、チェックアウト完了前に商品が表示価格で購入ができるかを検証できるようになります。

製品データのAIエージェント対応に向けた4つの選択肢
1. AIエージェント対応のプラットフォームを活用する
AIエージェント対応の製品データを実装するのに最適な方法は、ShopifyのようなAIエージェント対応のプラットフォームを活用することです。Shopifyは主要なAIチャネルとの連携を見据えて、商品データ連携やAPI活用をいち早く進めているプラットフォームで、主要な生成AIへのリアルタイムデータ提供が可能となるAPIアクセスを標準実装しています。また、AIエージェント対応の以下の機能もついています。
- Shopifyエージェントストアフロント:Chat GPT(チャットジーピーティー)、Microsoft Copilot Checkout(マイクロソフトコパイロットチェックアウト)、Google AIモード、Gemini(ジェミニ)といったAIプラットフォーム上で、自社商品を見つけてもらい、販売できるようになります。
- Shopify Catalog(ショッピファイカタログ):AIがShopify Catalogを検索して、価格やオプションなどの商品情報をリアルタイムで表示することが可能です。商品が正しく認識し表示されるよう、タイトルや説明、商品情報を詳細かつ分かりやすく記載できているかを確認しましょう。ストアと商品が要件を満たしていれば、自動的に商品がShopify Catalogに表示されるため、追加で作業する必要もありません。
- エージェンティックプラン:ECサイトのShopifyへの移行が難しい事業者向けのプランです。Shopify上にオンラインストアを開設せずに、エージェントストアフロントのメリットを受けられます。商品フィード接続やチェックアウト設定が必要となります。
エージェントストアフロントの設定の有無にかかわらず、商品はAIの検索結果に表示される可能性があります。一方、AI経由でのチェックアウトを可能にするには、エージェントストアフロントの有効化が必要となります。
2. 商品データフィードやAPI連携を自社で構築する
社内に開発者がいる場合は、AIエージェント対応の商品データフィードやAPI連携を自社で構築することが可能です。一方で、データフォーマットや連携、リアルタイム性を保つための方法などは、各プラットフォームで異なる可能性があり、個別に対応する必要があります。そのため、AIエージェント対応の製品データ管理を自社で行おうとすると、専門技術を持つスタッフが必要になるだけでなく、構築や保守にかかる膨大な時間やコストが必要となります。
3. 大規模言語モデル対応のブランディングやGEOを行う
大規模言語モデル対応のブランディングや、AIに自社の発信する情報を引用してもらいやすくするGEOで、自社の製品がAIの選択肢に選ばれるよう対策を講じることが可能です。これまでのブランディングやSEO対策とも共通する施策も多いため、すでにAIにブランドや商品が認識されており、追加の施策を行わなくてもAIの回答に商品が含まれることもあります。
例えば従来のSEO対策において、GEO対策でも有効とされるものは以下の通りです。
- 質の高いコンテンツ:内容がわかりやすいほどAIに参照されやすくなります。キーワードを入れるだけでなく、見出しやコンテンツに質問形式のフレーズを使用するといった方法も有効です。商品の使い方や特徴、素材、比較など具体的な情報は引用されやすくなります。
- タイトルタグと見出し:商品名やカテゴリ名、関連ワードを適切に含めることで、AIはページ内容を把握しやすくなります。
- サイトマップ:正確なサイトマップを準備しておくことで、ページ構成や関連性が分かりやすくなります。さらに、新商品ページや更新したページを認識されやすくなり、最新情報が引用される可能性が高くなるでしょう。
- レビューを掲載する:AIはカスタマーレビューを引用するケースがあるため、レビューを獲得し掲載することが重要です。
ただし、AIはインターネット上に蓄積されたさまざまな情報をもとにブランドや商品について理解を進めるため、情報の正確性やリアルタイム性が損なわれる可能性があります。GEOやブランディングのみに頼っていると、以下のようなリスクが想定されます。
- 在庫切れ商品や過去の商品が表示される:サイトの在庫状況をリアルタイムで確認できないため、在庫が切れている商品や過去に販売した商品がおすすめとして表示されるリスクがあります。
- 誤った価格表示:過去の販売価格を表示するリスクがあります。決済時に顧客が当初の価格と異なることに気付き、サイトに不信感を抱くことにつながります。
- 誤解を招く商品表現:AIが一部の情報のみを理解したことにより商品説明が不十分となる、または過去の情報を提供してしまう可能性があります。
- 情報不足:返品ポリシーや配送日数、サステナビリティへの取り組みなどAIが理解できない形式で記載されていると、回答ができずに顧客の離脱を招いたり、AIが理解した部分だけを伝えることで混乱を招く可能性があります。
4. 動向を観察する
エージェンティックコマースは登場したばかりの新しい販売形態であるため、動向を観察するという事業者もいるでしょう。今後の展望がはっきりと見えず、不確実性が高いことから、今すぐに施策を実行することは費用対効果が期待できないのでは、と考えている人も少なくありません。現時点である程度AIの回答に商品情報が掲載される場合はなおさら、すぐに対応する必要性を感じないかもしれません。
しかしこの選択は、今後エージェンティックコマースが一般化した時に、手遅れとなる可能性があります。競合他社に大きく遅れを取ることにより、AI経由での商品売上に伸び悩む事態も考えられるでしょう。普及の初期段階である今のうちから、AIに対応できる体制を整えておくことで、消費者の購買週間に適応しビジネスの成長を促すことも可能となります。急激に変化する市場の動向を注意深く観察しながら、今後スムーズに適応していけるよう、今のうちに基盤づくりを行っておくことをおすすめします。
まとめ
AIエージェント対応の製品データは、消費者がAIを活用して効率的に買い物をするエージェンティックコマース時代に必須の要素となるでしょう自社商品がAIの回答に表示されるようにできるだけでなく、そのまま顧客が購入可能とするには、あらかじめ機械可読性とリアルタイム性に配慮した製品データを用意しておく必要があります。AI経由での顧客のコンバージョン率が高いことからも、売上を伸ばすために製品データをAIエージェント対応にすることは重要な施策と言えるでしょう。
Shopifyは、エージェントストアフロントやShopify Catalogなど、EC事業者が手軽にAIエージェント対応の製品データを実装できる環境が整っています。進化を続けるAIエージェントに対応させ、エージェンティックコマースを通して売上アップや業績向上を目指す方はぜひ、Shopifyを活用してみてください。
AIエージェント対応の製品データに関するよくある質問
AIエージェント対応の製品データとは?
AIエージェント対応の製品データとは、AIツールが製品情報を正確に理解して処理できるよう、あらかじめ最適化したデータのことです。消費者に代わってAIが商品の検索や比較を行えるようにするためには、商品ページの構造などをAIに最適化する必要があります。AIエージェント対応の製品データでは、AIが正確に読み取れる「機械可読性」の高いデータ構造と、在庫数などが反映される「リアルタイム性」が重要となります。
エージェンティックコマースとは?
エージェンティックコマースとは、AIエージェントが顧客の指示に基づき、商品の検索から比較検討、決済プロセスの実行まで代行する新しいオンラインショッピングの形態です。エージェント型コマースとも呼ばれ、場合によっては顧客の都合に合わせて配送日の設定まで行ってくれます。エージェンティックコマースは、ChatGPTやCopilotなどのAIプラットフォームまたはAIエージェントを実装したアプリやECサイトから利用が可能です。
ユニバーサルコマースプロトコル(UCP)とは?
ユニバーサルコマースプロトコルとは、ShopifyとGoogleが共同開発したもので、商品データや決済インフラ、フルフィルメントロジックなどを構造化することで、AIエージェントが各加盟店と円滑に接続、取引ができるよう設計された標準規格です。UCPを採用することで、AI上での埋め込み型チェックアウト機能が確実に利用できるようになります。




